「(だけど、いやいや、どうして『新島八重』のことを話さないといけなかったんだ?)」
と、ビエール・トンミー氏が、解したと思った糸がまだ解しきれていなかったことに気付いた時、その縺れた糸と糸との間から出てくるように、友人のエヴァンジェリスト氏からのiMessageが届いた。
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「ワシが云うたんは、<『やえ』やったんは、広島の女じゃ>じゃけえね」
「はああ?その『やえ』は、『新島八重』のことやろが」
「ほうよねえ」
「エエか、アンサン、『八重の桜』見てへんかったさかい、知らんのかもしれへんけど、『新島八重』は、会津、そう、福島の女性なんやで」
「ほうじゃろうねえ」
「おお、なんや、開き直りかいな」
「『新島八重』は、福島の女性なんじゃろうけど、『やえ』演ったんは、広島の女なんよ」
「『演った』?ああ、アンサン、今、ようやっと漢字を使うて、また態と勘違いするような云い方したんやな。要するに、『新島八重』を演じた女優やな」
「ほうなんよ。アンタあ、あの女優は好きなん?まあ、『蓼食う虫も好き好き』んなじゃろうけど」
「はあ?なんで、そないな言葉をここで出してくんのや?そりゃ、俳優の好き嫌いも人それぞれやろから、当り前やな」
「いやの、『やえ』演ったんは、『蓼丸綾』じゃけえ、それに引っ掛けてみたんよ」
「は?なんや、その『蓼丸綾』て?『新島八重』を演じたんは、『綾瀬はるか』やったで。芸能界に疎いワテやけど、そのことは覚えとるで。前にも云うたように、『八重の桜』は、初めはオモロかったが明治時代になって『八重』が洋装して自立した女性になって何でも男勝りにする様になってから急に話がオモロなくなったさかい、『八重』を演じた『綾瀬はるか』も好かんけどな」
「じゃけえ、『やえ』演ったんは、『蓼丸綾』じゃないねえ」
「は?」
「『綾瀬はるか』の本名は、『蓼丸綾』じゃけえ」
「そないなこと知るかいな」
「『綾瀬はるか』いう芸名は、公募で決めたらしいんじゃけど、『山中恒』さんもある意味、関係しとるいう説もあるみたいなんよ」
「また、知らん名前、出してきよったで」
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「(あ~あ。アイツ、こうやってまた話を脱線させて行くんだ)」
と、ビエール・トンミー氏は、辟易感から、座った椅子に背中を凭せ掛けた。
(続く)