「(あ、『ヒモ』くんの奥さんだ!...でも、それが、どうしたんだ?)」
と、ビエール・トンミー氏が、友人のエヴァンジェリスト氏のことを『関東の上沼恵美男』と呼んだのは、エヴァンジェリスト氏の次兄『ヒモ』くんの奥さんだった、と頭の中のどこかに引っ掛かっていたものを見つけたものの、それに何の意味もないことを気付いた時、エヴァンジェリスト氏からも、そのことを肯定するものの、だから良し、とはならないiMessageが入ってきた。
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「ワシは『関東の上沼恵美男』と云われとるけど、『上沼・高田のクギズケ!』の『上沼』は、『上沼恵美子』なんよ」
「ああ、ほんまもんの方や、いうことやな」
「なんねえ、ワシが偽もんじゃあ、云うん?『上沼恵美子』の本物は、本物の『上沼恵美子』じゃけど、ワシは、『上沼恵美子』じゃのうて、『関東の上沼恵美男』じゃけえ、それはそれでほんまもんもでえ」
「ああ、面倒臭い奴っちゃなあ。もう、その辺のことはどうでもエエ」
「そうよ、問題は、『上沼恵美子』でも『関東の上沼恵美男』でもないけえ、確かに、『その辺のことはどうでもエエ』んよ。『上沼恵美子』と一緒に『上沼・高田のクギズケ!』いうテレビ番組に出とる『高田純次』でもないんじゃけえ、問題は」
「あんなあ、エエ加減にしいや。アンサン、『でもない』もんのことばっかしやで」
「ほうなんよ。『純資産』は、『高田純次』の資産のことじゃないんよ。でも、アンタあ、『純資産』知らんのんじゃろ?」
「うっ…」
「いや、恥じることはないで。なんぼ、アンタが、天下の『ハンカチ大学』商学部出身じゃあ云うても、アンタが、『ハンカチ大学』に在学しとった頃には、決算書に『純資産の部』なんかなかったんじゃけえ」
「お…おお、おお、おおー!せや、ワテが、大学生の頃、その『純資産の部』なんちゅうもんは、決算書にあらへなんだで」
「『新会社法』が施行されて、『資本の部』がのうなって、『純資産の部』ができたんは、2006年じゃけえ」
「そやねん、ワテが大学生やった頃の『旧会社法』やと、『純資産の部』はあらへんかったんや」
「ふふ」
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「(え?なんだ?なんだ。なんだ、なんだ?)」
と、ビエール・トンミー氏は、原因不明の不整脈に突然襲われた時のように、苦痛のような強い疑問に、胸に手を当てながら顔を潰した。
(続く)