「(あ、いや、違う、違う。そういう問題じゃないぞ)」
と、ビエール・トンミー氏は、またしても友人のエヴァンジェリスト氏に話をはぐらかされようとしていることに気付いて、椅子に座った自らの姿勢を正し、強い意志を込めたiMessageをエヴァンジェリスト氏に送った。
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「アンサン、あかんで。孫とのやり取り聞いとると、アホやなあ、と思いつつも、ついついそっちの話に引きづられるところやったけど、問題は、アンサンの孫やあらへん。アンサンの孫は、アイヌでも縄文人でもあらへんやろ」
「アンタあ、面白いこと云うのお」
「問題は、『恐羅漢山』やで。『恐羅漢山』の名前が、アイヌ語の『オソル・ラカン』(尻の穴)が語源かもしれへんとか、実は、アイヌとも繋がりがあるかもしれん縄文人がそこに関係しとるかもしれんとしてもや、『恐羅漢山』は、なんで、『尻の穴』ちゅうオゲレツな名前を付けられたんや、ちゅうことやで」
「おお、さすが天下の『ハンカチ大学』商学部出身で、在学中、マーケティングの権威『マサ・オウーノ』教授が教鞭をとっていた教室の隣の教室で学んどっただけのことはある聰明さの持ち主じゃのお」
「余計なこと、ゴチャゴチャ云わんと、ちゃんと説明せんかい!」
「じゃけえ、女の子が、好きな男の子のことを、態と嫌いと云うようなもんじゃったんじゃろうと思うんよ。アイヌじゃあ、子どもが生まれてしばらくは、正式な名前付けんで、あだ名で呼んだりしたんじゃと。それも、態と汚い名前にしたんじゃと。綺麗な名前じゃと、悪いカムイ(神)に連れて行かれてしまうかもしれん、いうことらしいんよ」
「ああ、そういうことかいな。『女の子が、好きな男の子のことを、態と嫌いと云う』というんとは、ちょっとチャウような気がするけど、そないなんは、アイヌだけのことやないんやないか。『豊臣秀吉』が、自分の第一子に『捨』と名前をつけたんも、おんなじような理由からやったはずや」
「おお!アンタあ、『西洋美術史』だけじゃのうて、『日本史』にも詳しいんじゃね!さすがじゃあ!」
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「(そうなんだ。ボクは、このところ、と云うか、現役を引退してから、『日本史』にも詳しくなったんだ)」
と、ビエール・トンミー氏は、誰に見られている訳でもないのに、椅子に座ったまま胸を張った。
(続く)
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