(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その22]の続き)
「いい景色を見せてやる」
と云うと、ビエール・トンミー氏は、『エスカー』の第2区間の乗り場を通り過ぎ、その先に向った。
「いい景色を見て仕事を忘れろ」
と、ビエール・トンミー氏が、エヴァンジェリスト氏を連れて行ったのは、展望ウッドデッキだった。
「おおー」
展望ウッドデッキから開けた視界に、エヴァンジェリスト氏は、思わず感嘆した。
「なんだか、心が解放されるような気がするなあ」
手前の樹々の向こうに見えるのは、空と海だ。
「お!?なんだ。あれは?」
エヴァンジェリスト氏が、下の方を指差した。
「んむ?」
ビエール・トンミー氏は、友人が指す方に目を遣った。
「ヨットか?」
「ああ、ヨットハーバーだな」
「うーむ、ボクはまだ小型船舶の免許を取っていないんだ」
「はあ?」
ビエール・トンミー氏は、友人が時々、訳の分からぬことを言い出すのには慣れてはいたが、だからといって、その『訳』が判るものではなかった。
「だから、まだ電話がかかって来ないのかなあ?」
(続く)