「(ボクが友人の兄のことを『ヒモ』くんと『くん』呼ばわりするのもなんだが、アイツ自身が、『兄』と呼んだことがなく、昔も今も『ヒモ」くんと呼んでいるんだから仕方ないだろうが、南柏のアパートで『ヒモ』くんは、かなり癖のあるタバコを吸っていた。アイツ、『ヒモ』くんがタバコを吸うのを凄く嫌がっていたし、『ヒモ』くんが自分の洗濯物を洗剤と水を入れたバケツに浸けたままにするのも、かなり怒っていたが、でも、2人の兄弟仲は良かったからなあ。でも、その『ヒモ』くんはもうこの世にいない。だからこそ、懐かしんで、『タバコ吸う人は大好き』、と思うんだろうか?)」
と、ビエール・トンミー氏が、大学受験浪人の頃、友人のエヴァンジェリスト氏とその次兄である『ヒモ』くんが住んでいた南柏のアパートに転がり込んで過ごしていた時間を回想しながら、エヴァンジェリスト氏にiMessageを送った。
[参照:チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その71)]
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「ああ、『ヒモ』くんやな?」
「え?『ヒモ』くんがどしたん?」
「『ヒモ』くんが吸ってたタバコ、確か洋モクやったと思うんやけど」
「ああ、『ゲルベ・ゾルテ』じゃね。『ヒモ』くんは、『ギルベゾール』とか云うとったような気がしとったけど、正しゅうは、『ゲルベ・ゾルテ』じゃね。平べったい妙な形のタバコじゃった」
「おお、それや、それや。『ゲルベ・ゾルテ』や」
「ワシ、専門はフランス文学じゃけえ、よう知らんのんじゃけど、『ゲルベ』は、ドイツ語で『黄色い』いうような意味なんじゃろ?『ゾルテ』は、『種類』いうような意味なんじゃろ?アンタあ、ドイツの『メルセデス』さんと『ふか~い』付合いがあるけえ、よう知っとるんじゃろうけど」
「あんなあ、アンサン、誤解招くような云い方は止めえなあ。確かに、『メルセデス』、つまり、『ベンツ』とは『ふか~い』付合いやけどな。そういうたら、『ゲルベ・ゾルテ』の箱は、金色いうか黄色い感じのパッケージやったし、『ベンツ』みたいに高級感ある箱やったな。高級やったせいか、『ゲルベ・ゾルテ』は、匂いの強いタバコやったし、アンサン、当時は嫌うとったけど、今となったら、『ヒモ』くんのことを思い出させる懐かしい匂いなんやろな。『ヒモ』くんがタバコ吸っとったさかい、タバコ吸う人は大好きなんやな?」
「はああ?南柏時代は懐かしいし、『ゲルベ・ゾルテ』は嫌いじゃったけど、あの強力な臭いも、確かに懐かしさの記憶の一部にゃあなっとる。でもの、ワシ、タバコは、あの頃も今も大嫌いじゃけえ。それに、『ヒモ』くんは、いつからか知らんけど、もうだいぶ前からタバコ吸わんようになとったけえ、タバコのことで『ヒモ』くんのこと、思い出さんで」
「ほなら、なんで、『タバコ吸う人は大好き』なんや?」
「税金ようけえ、払うてくれるんじゃけえ」
「ああ、そういうことか。まさに『たばこ税』やな」
「おお、ようよう話が『たばこ税』に戻ったで」
「いつも話をあっちゃこっちゃ持ってくんは、アンサンやがな。まあ、エエ。で、次は、『ガソリン税』や。ガソリンスタンドでクルマにガゾリン入れるとやな、『ガソリン税』が入っとんのや。正確には、『ガソリン税』いうんは、ガソリンに課される揮発油税と地方揮発油税の総称なんやけどな」
「ワシ、ガソリンスタンド好きなんよ」
「アンサン、ガソリンスタンドには行かんやろ。行く必要ないやろ。ガソリンの匂いが好きで、嗅ぎにガソリンスタンドまで行くんか?」
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「(アイツ、天邪鬼というのか、自分が否定するもの、或いは、自らにとって否定的なものに対して、敢えて肯定的な言動をとる面倒臭い奴だ)」
と思いながらも、ビエール・トンミー氏は、友人のエヴァンジェリスト氏に対して鷹揚な心持ちでいることを、椅子にゆったり座ることで見せていた。
(続く)
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