2021年9月30日木曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その2]

 


「(沢山、来てたわ)」


『少年』の母親は、琴芝駅(山口県宇部市)の周辺に、隠れるように集っていた少女たちに気付いていたのだ。


『少年』が、琴芝から広島に引っ越すことを知り(1967年3月のことである)、


「ビエ君、本当に行くん?!」


と、瞼に涙を溜めたのは、『少年』がいた宇部小学校の女子児童だけではなかった。神原小学校の女子児童たちも、


「ジェームズ・ボンド、ずっと琴芝におってえ!」


と、『琴芝のジェームズ・ボンド』の異名を持つ『少年』に会えなくなるという現実を受け止められないでいた。


「うち、広島の高校、大学に行っちゃる」


と心に決める宇部学園女子中学・高校(今の慶進中学・高校)の女子生徒たち、宇部中央高校の女子生徒たちもいた。


「グトン」


と電車が動き出した時、そんな女子児童たち、女子生徒たちが、『少年』が乗った列車のいる琴芝駅のホーム横に、塩田川を越えた側にも、何人も佇んでいたのだ。




「(でも、ビエ君、まだ女の子には興味なかったみたい)」


電車の車窓からそんな少女たちを見ながら、『少年』の母親は、どこか安心したように、そう口の中で呟いた。『少年』は、線路脇の草を見ており、少女たちに気付いている風ではなかった。


「お兄さんに紹介してえや」


自分の兄を見送りに来た少女たちに気付いていた『少年』の妹は、何人もの同級生の女子児童に、そう頼まれたことを思い出していた。


「(まあ、確かに….)」


と、妹(若き日のビエール・トンミー氏の妹)は思ったが……



(続く)




2021年9月29日水曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その1]

 


「さあ、ビエ君、召し上がれ」


と、母親に云われた『少年』は、


「はい!」


と、背筋を伸ばしたまま、斜め前の席に座る母親の方へと体を向け、サンドイッチを受け取った。特急列車の座席を回転させ、向い合わせの4人掛けの席になっていた。


「牛乳もあるわよ」


と、母親は、テトラパックの牛乳も手渡した。


「(この子には、やっぱりサンドイッチが似合うわ)」


母親は、その日の朝、おにぎりの弁当にするか、サンドイッチにするか考えたのだ。


「(だって、ハイカラだもの)」


『少年』は、母親の自慢の息子であった。


「(それに、美男子だし)」


両手でサンドイッチを持ち、大きく開け過ぎない口に運びながら、車窓から瀬戸内海を見る息子の横顔を見て、微笑んだ。




「ママ、私にもサンドイッチ頂戴」


隣に座っていた娘に催促され、母親は、我に返った。


「はい、どうぞ」

「もう、ママったら、いつもお兄ちゃん、優先なんだから」


と、少し頬を膨らませたが、娘は本気で怒っている訳ではないようであった。


「……」


前日も残業をし、疲れていたのか、『少年』の隣に座る父親は、うたた寝をしていた。


『少年』とその両親と妹の、そう、若き日のビエール・トンミー氏の一家は、父親の転勤に伴い、山口県宇部市の琴芝から広島市に引っ越して行くところであった。



(続く)



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2021年9月28日火曜日

【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その225=最終回]

 


<注意>

ビエール・トンミー先生のiMessageによるベンツの『クラス講座』は、ベンツの幾つかの『クラス』に対して、またそのオーナーに対して、辛辣過ぎる評価があるかもしれないが、決して、それらのベンツ、のオーナーを侮辱、差別をするものではない。


西洋美術史としてのビエール・トンミー先生の審美眼と、ハンカチ大学商学部卒の、しかも、SNCFの大家としてのビエール・トンミー先生のビジネス・センスとから、あくまで個人としての評価を述べるものである。


長年のベンツ・オーナーであるビエール・トンミー先生は、総ての『クラス』のベンツとそのオーナーを愛している。ベンツは、『評価』をするに値するクルマなのだ。『評価』をするに値しないモノについては、ビエール・トンミー先生は、言葉一つ吐くことはない。


ビエール・トンミー先生は、時に、ベンツ以外のクルマについても忌憚なき発言をされる(あくまで個人としての評価だ)。この場合も、その対象が『評価』をするに値するクルマだからである。



[ホイラーなベンツへ(続き28)]



「んん?なんや、何が、『やっぱりそうでしたか!』なんや?」


と、ビエール・トンミー先生は、生徒エヴァンジェリスト氏宛のiMessageで、エヴァンジェリスト氏に対して警戒感を示した。ビエール・トンミー先生の生徒エヴァンジェリスト氏に対するiMessageによるベンツの講義は、ビエール・トンミー先生が『ビートル』の次の次に乗った『プレリュード』からベンツに乗り換えたのは、ベンツの『哲学』、『理念』、『思想』に共感したからという説明となったが、エヴァンジェリスト氏が、何やら意味ありげに『はは~ん。やっぱりそうでしたか!』と云ったのだ。


「ベンツって、『気が付かんうちに平気で150キロ位速度出てるん』ですね?」

「ああ、せやで」

「ベンツって、『スピードを出せば出すほど『ビシッと』安定して走るん』ですね?」

「せやけど、それがなんやねん?」

「やっぱり先生、150キロのスピードをお出しになったのですね」

「…っ。ちゃう、ちゃう。ワテのiMessage、よう読んでみい。ワテが150キロでベンツ走らせたあ、とは書いとらんやろ。それに、前にも云うたけどな、アンタともあろうモンが、コトの本質から外れたことばっかし云うとったらアカンで。大事なんは、ワテがベンツを選んだんは、『ベンツ』ちゅうブランドに惹かれたからやないんやいうことや。もういっぺん云うたるが、ワテがベンツ気に入ったんは、そこに『哲学』、『理念』、『思想』があったからや。そういったモンに基づいた機能があったからなんや」

「確かに、先生は、ベンツであればどのベンツでも良し、とはされていません。ベンツであっても、『哲学』、『理念』、『思想』に揺らぎのある『クラス』には批判的でいらっしゃる。数あるベンツの中でも先生が『Eクラス』をお選びになったのは、『Eクラス』がベンツの『哲学』、『理念』、『思想』を最も体現した『クラス』だからですね」

「おお、ワテの『ベンツ講座』を200回以上、受講してきただけのことはあるやないか」

「なんですか。『200回以上』って?」

「惚けんやないで。ワテらのこのiMessageを『プロの旅人』で公開してんのやろ」

「へ、そうなんですか?」

「『プロの旅人』はオゲレツBlogや。あんなモン、読んどるモンの気がしれん。けどやな、『プロの旅人』にも『哲学』、『理念』、『思想』があるんやあ思うで」

「おお、先生!」

「アンタは、オゲレツな奴っちゃ。けど、アンタにも『哲学』、『理念』、『思想』があるんやあ、とは思うとるで。アンタは、衒いちゅうモンが嫌いなんや。やから、敢えて、逆にオゲレツに走るんや。アンタは、アンタん中にある『真』をそのまま見せることにもの凄う抵抗感があるんや。で、それを隠す為に、オゲレツなことばっかし云うんや」

「いえ、私は、ただのオゲレツな男です。先生のような『Eクラスな男』とは違います」

「おお、そこや!まさに、アンタのそういうトコに、アンタの『哲学』、『理念』、『思想』があるんや。アンタは、『己を見んではおれん男』や。云うたら、アンタは、『NGクラスな男』やな」

「え?『NGクラス』?」



「『己を見ないでおく』ことがでけん(つまり、『NG』)、そういうことと思うやろ?」

「先生、先生のコーガン、いや、慧眼にはあらためて…」

「でも、『NGクラス』は、ホンマは、『んぐっ!』クラスや」

「え!?」

「アンタ、『んぐっ!』ばっかししとるし、何かあるとすぐ『んぐっ!』持ち出してくるやんか。それも、オゲレツを隠す為の行為やのうて、純粋なオゲレツや。やから、アンタあ、『NG(んぐっ!)クラスな男』やでえ!アーハッハッハア!」



(おしまい?.....『ベンツ講座』は、またいつの日か…)



「おいおい、勝手にワテの『ベンツ講座』辞めんのかあ!まだ、アンタに説明しとらんベンツの『クラス』や車種はようさんあるんやで。それに、輸入車についても語ってやらんとアカンと思うとるんが、ぎょうさんあるんや。例えば、FIAT500(チンクエチェント)や」

「え!えええー!FIATチンコエチェントですかあ!」

「このアホンダラあ。アンタ、やっぱり『NG(んぐっ!)クラスな男』やあ!」



(今度こそ、おしまい?.....『ベンツ講座』は、またいつの日か…)





2021年9月27日月曜日

【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その224]

 


<注意>

ビエール・トンミー先生のiMessageによるベンツの『クラス講座』は、ベンツの幾つかの『クラス』に対して、またそのオーナーに対して、辛辣過ぎる評価があるかもしれないが、決して、それらのベンツ、のオーナーを侮辱、差別をするものではない。


西洋美術史としてのビエール・トンミー先生の審美眼と、ハンカチ大学商学部卒の、しかも、SNCFの大家としてのビエール・トンミー先生のビジネス・センスとから、あくまで個人としての評価を述べるものである。


長年のベンツ・オーナーであるビエール・トンミー先生は、総ての『クラス』のベンツとそのオーナーを愛している。ベンツは、『評価』をするに値するクルマなのだ。『評価』をするに値しないモノについては、ビエール・トンミー先生は、言葉一つ吐くことはない。


ビエール・トンミー先生は、時に、ベンツ以外のクルマについても忌憚なき発言をされる(あくまで個人としての評価だ)。この場合も、その対象が『評価』をするに値するクルマだからである。



[ホイラーなベンツへ(続き27)]



「先生が何故、ベンツをお選びになったのか、判ったのです」


というビエール・トンミー先生宛の、生徒エヴァンジェリスト氏のiMessageには確信が満ちていた。ビエール・トンミー先生の生徒エヴァンジェリスト氏に対するiMessageによるベンツの講義は、ビエール・トンミー先生が『ビートル』の次の次に乗った『プレリュード』からベンツに乗り換えた事情説明となり、『ベンツのブレーキの哲学』へと話題が展開し、エヴァンジェリスト氏は、先生がベンツに乗り換えたことに納得したようなのであった。


「先生は、ベンツの『哲学』に、『理念』とか『思想』とかに共感を覚えられたのですね。それで、『プレリュード』からベンツに乗り換えられたのですね」

「ああ、それが総てや。それと、『哲学』、『理念』、『思想』に基づいた機能やな。ワテは、ベンツが『ベンツ』やさかい選らんだんとちゃうんや」

「『スリーなんとか』が付いているから、ではないのですね」

「せやで。ブランドは、後からついてくるモンや。『●ェ●ー●』とか『●●●ッ●●』とかの『バカ車』はブランドだけや」

「おーっと、危ない」

「なんや、アンタ、勝手にワテのiMessage、伏せ字にすんやないで」

「え?何のことでしょう?」

「プレリュードの次の車を考える時に、『機械としてのベンツ』が優秀であることを知ったさかい、迷わずベンツにしたんや。間違うても、ブランド志向でベンツを選んだ訳ではないで。ここんとこ強調せんとアカン」

「『スリーなんとか』が付いているから、ではないのですね」

「そん通りや。『スリーポインテッドスター』で選んだんやないで」




「でも、先生は、『スリーポインテッドスター』グッズをお集めでしたね」

「うっ…それはやなあ…ああ、それは、『スリーポインテッドスター』が、『ベンツ』ちゅうブランドのマークやからやないで。ベンツの『哲学』、『理念』、『思想』を体現したマークやからや。ベンツは、他のどんなクルマよりも丁寧に作られとって(せやから値段が高いんや)、高速でも安全で、クルマとしては最良の選択と判断したんや」

「所謂、『安全・安心』とは違うのですね」

「そないな言葉だけのもんと一緒にすんやないで。それまで国産車で、120キロ以上速度を出すと『やや、これはスピード出しとるでェ』ちゅう感じやったのが、ベンツやと、気が付かんうちに平気で150キロ位速度出てるんや。へてから、スピードを出せば出すほど『ビシッと』安定して走るんや。ベンツの直進安定性は半端やないで」

「はは~ん。やっぱりそうでしたか!」



(続く)




2021年9月26日日曜日

【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その223]

 


<注意>

ビエール・トンミー先生のiMessageによるベンツの『クラス講座』は、ベンツの幾つかの『クラス』に対して、またそのオーナーに対して、辛辣過ぎる評価があるかもしれないが、決して、それらのベンツ、のオーナーを侮辱、差別をするものではない。


西洋美術史としてのビエール・トンミー先生の審美眼と、ハンカチ大学商学部卒の、しかも、SNCFの大家としてのビエール・トンミー先生のビジネス・センスとから、あくまで個人としての評価を述べるものである。


長年のベンツ・オーナーであるビエール・トンミー先生は、総ての『クラス』のベンツとそのオーナーを愛している。ベンツは、『評価』をするに値するクルマなのだ。『評価』をするに値しないモノについては、ビエール・トンミー先生は、言葉一つ吐くことはない。


ビエール・トンミー先生は、時に、ベンツ以外のクルマについても忌憚なき発言をされる(あくまで個人としての評価だ)。この場合も、その対象が『評価』をするに値するクルマだからである。



[ホイラーなベンツへ(続き26)]



「『ホイラーの法則』?『ホイール』やから『ホイラー』やて、一見意味ありげなだけで浅薄な感じやで」


と、ビエール・トンミー先生は、生徒エヴァンジェリスト氏に、批判ぎみなiMessageを送った。ビエール・トンミー先生の生徒エヴァンジェリスト氏に対するiMessageによるベンツの講義は、ビエール・トンミー先生が『ビートル』の次の次に乗った『プレリュード』からベンツに乗り換えた事情説明となり、『ベンツのブレーキのポリシー』と話題が展開し、確実にクルマを止める為に、ブレーキパッドの削りカスがホイールに付着して黒くなるベンツのブレーキには、『ホイラーの法則』が適用されていると、エヴァンジェリスト氏が云い出したのだ。


「天下のハンカチ大学商学部出身で在学中、マーケティングの権威であるマサ・オウーノ先生が講義されている隣の教室で簿記の授業中にうたた寝されていた先生なら、『ホイラーの法則』のことはよくご存じのはずです。私をお試しですか?」

「おお、悪かったな。せやねん、アンタには失礼かもしれへんが、アンタが『ホイラーの法則』を知っとんのか試してんのや」

「エルマ・ホイラーは云ったのです。『ステーキを売るな!シズルを売れ!』と」

「おお、せやせや。知っとったんやな。で、『ベンツのブレーキの哲学』がなんで『ホイラーの法則』なんや?」

「『ステーキを売るな!シズルを売れ!』は、申すまでもなく、ビジネスのあり方として、ステーキそのものを売るのではなく、ステーキを焼く時のジュージューいう音(まさにシズルですね)や匂い等のお客様の食欲(購買意欲)をそそるようなものを売る(アピールする)ことが肝要である、というものです」




「アンタ、フランス文学修士やのに、ちゃんと分っとるな」

「ベンツも、ただブレーキやホイールを提供しているのではないのでしょう。何があってもちゃんとクルマを止めるという機能を提供している(売っている)のだと思います」

「おお、せやでえ!その通りやでえ!」

「私、判りました!」

「なんが判ったんや?」



(続く)




2021年9月25日土曜日

【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その222]

 


<注意>

ビエール・トンミー先生のiMessageによるベンツの『クラス講座』は、ベンツの幾つかの『クラス』に対して、またそのオーナーに対して、辛辣過ぎる評価があるかもしれないが、決して、それらのベンツ、のオーナーを侮辱、差別をするものではない。


西洋美術史としてのビエール・トンミー先生の審美眼と、ハンカチ大学商学部卒の、しかも、SNCFの大家としてのビエール・トンミー先生のビジネス・センスとから、あくまで個人としての評価を述べるものである。


長年のベンツ・オーナーであるビエール・トンミー先生は、総ての『クラス』のベンツとそのオーナーを愛している。ベンツは、『評価』をするに値するクルマなのだ。『評価』をするに値しないモノについては、ビエール・トンミー先生は、言葉一つ吐くことはない。


ビエール・トンミー先生は、時に、ベンツ以外のクルマについても忌憚なき発言をされる(あくまで個人としての評価だ)。この場合も、その対象が『評価』をするに値するクルマだからである。



[ホイラーなベンツへ(続き25)]



「へっ!先生、どうなされたのですか?」


と、怯えながら、生徒エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー先生に返信iMessageを送った。ビエール・トンミー先生の生徒エヴァンジェリスト氏に対するiMessageによるベンツの講義は、ビエール・トンミー先生が『ビートル』の次の次に乗った『プレリュード』からベンツに乗り換えた事情説明となり、『ベンツのブレーキのポリシー』と話題が展開し、確実にクルマを止める為に、ブレーキパッドの削りカスがホイールに付着して黒くなるベンツに対し、批判的な言葉を発したカップルの女性のカレシが、自分のクルマを『土足禁止』としているとしたら、それは、そのカレシの車内は綺麗を保つという『ポリシー』なんだろう、とエヴァンジェリスト氏が云っことに(iMessageで)、先生は、怒りを示したのだ。


「アンタ、今、『ポリシー』云うたな」

「ええ、先生に『んぐっ!』したかもしれないオネエちゃんのカレシが、自分のクルマを『土足禁止』にしているとしたら、それは、車内は綺麗を保つ、というのが、そのカレシのポリシーだからではないか、と」

「『ポリシー』ちゅう言葉を安易に使うんやないで。『土足禁止』なんかはやなあ、ただの『偏執』や。『ポリシー』やあらへん。それを『ポリシー』云うんなら、『ベンツのブレーキのポリシー』は、『ベンツのブレーキの哲学』とでも云いかえなアカン」

「おお、哲学ときましたか。つまり、コトの根源、本質の追求なのですね」

「アンタ、たまにマトモなこと云うな。調子狂うで。また、何かオゲレツな話に持ってことしとんやないかと警戒してしまうで。でも、せやな、『コトの根源、本質の追求』ちゅうんは、アンタにとっては大事なことやったんやな。アンタの言葉に置き換えたら、『思想』と『理念』や。仕事ちゅうもんは、『思想』と『理念』を持ってせなアカンと、アンタが云うとったん覚えとるで」



(参照:【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その187]



「おお、そう云うことなのですね。ベンツのブレーキには、『思想』と『理念』が込められているのですね!」

「せやで。ベンツはクルマ作りに『哲学』を持ってんねん。そこには、『思想』と『理念』があるんや。ブレーキもそやねん。『ワテらのクルマは200キロ以上の速度で走りますねん。せやから、ブレーキは絶対に止まらんとアカン。その為には、ワテらはブレーキの鉄を削ってでも止めたるでェ。そん為には、ホイールが汚れてもカメへん』ちゅう、昔から絶対に変わらん『哲学』があんのや」

「ソ、ソ、ソクラテスかプラトンかあ、あたりが、ベンツのブレーキには潜んでいるのですね」




「『野坂昭如』的にまた茶化そうとしてんのか。その手には乗らへん。『野坂昭如』のCM、若い人は知らんしな。そんなんより、ええか、このブレーキへの姿勢、『哲学』なんかが、国産車との違いやな。国産車なら、『お客はんからホイールが汚れるという意見があるで。そりゃ、改善せな。制限速度100キロやさかい、そのアタリで絶対に汚れんホイール作ったろ』てな感じやろな」

「その点、ベンツのブレーキは、『ホイラーの法則』が適用されているのですね!」

「は?」



(続く)




2021年9月24日金曜日

【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その221]

 


<注意>

ビエール・トンミー先生のiMessageによるベンツの『クラス講座』は、ベンツの幾つかの『クラス』に対して、またそのオーナーに対して、辛辣過ぎる評価があるかもしれないが、決して、それらのベンツ、のオーナーを侮辱、差別をするものではない。


西洋美術史としてのビエール・トンミー先生の審美眼と、ハンカチ大学商学部卒の、しかも、SNCFの大家としてのビエール・トンミー先生のビジネス・センスとから、あくまで個人としての評価を述べるものである。


長年のベンツ・オーナーであるビエール・トンミー先生は、総ての『クラス』のベンツとそのオーナーを愛している。ベンツは、『評価』をするに値するクルマなのだ。『評価』をするに値しないモノについては、ビエール・トンミー先生は、言葉一つ吐くことはない。


ビエール・トンミー先生は、時に、ベンツ以外のクルマについても忌憚なき発言をされる(あくまで個人としての評価だ)。この場合も、その対象が『評価』をするに値するクルマだからである。



[ホイラーなベンツへ(続き24)]



「へええ、ドイツって、日本に似てキッチリしている国民性の国だと思っていましたが、クルマのホイールを、削りカスで汚れたままにするなんて、ドイツ人は、思ったより雑なんですね」


と、生徒エヴァンジェリスト氏は、iMessageで、ビエール・トンミー先生に失望を伝えた。ビエール・トンミー先生の生徒エヴァンジェリスト氏に対するiMessageによるベンツの講義は、ビエール・トンミー先生が『ビートル』の次の次に乗った『プレリュード』からベンツに乗り換えた事情説明となり、『ベンツのブレーキのポリシー』と話題が展開し、確実にクルマを止める為に、ベンツではブレーキパッドの削りカスがホイールに付着して黒くなる、という説明を聞き、エヴァンジェリスト氏は、ドイツ人の国民性への期待が裏切られた思いがしたようなのであった。


「ちゃうちゃう!国産車は、ベンツのような過酷な状況でのブレーキ操作を行う環境をそもそも想定してへんのや。せやから、究極のブレーキ性能よりホイールが汚れんことを第一に優先してんのや。ベンツは、その点、ホイールを綺麗にしとる場合やない、絶対、安全に守らなアカン、と考えとるんや」

「しかし、日本では200キロ出すなんてことないのですから、そこまでのブレーキ性能を求めず、むしろ美しさを優先して当然ではありませんか?」

「あんなあ、確かに、ホンマんとこは、日本では200キロ出したらあかん。でもや、『なんちゃって自主アウトバーン』で、150キロ、いや、200キロで走ったりする奴はおりよんのや」

「ああ、ご自身の経験に基づいたお考えですね」

「ちゃう、あくまでそういう奴がおらんとも限らへん、ちゅうことや。それにやな、国産車かてドイツに輸出したら、200キロで走らされることもあり得るやんか、そこんとこ気付かんのは、アンタらしゅうもないで。リスク対策ちゅうんはな、万が一の場合を想定しとかなアカンのや」

「法的に問題はないとしても、ドイツでも200キロ出すのは危険で、すべきことではないと思いますがねえ」

「日本の場合は、クルマを綺麗にしょ、いう考えが過ぎとんのや。以前、旅行で展望台の駐車場に停めた時のことや。隣り停めた国産車に乗って来たオネエちゃんが、カレシに『何であのクルマのホイール汚れてんのやあ?』と質問してたで」

「そのオネエちゃん、関西人だったんですか?」

「あのオネエちゃんのワテを見る目ェは、『クルマも綺麗にせん無精者めがあ』ちゅう目ェやったで」

「でも、そのオネエちゃん、その後、クルマの持ち主をよーく見て、『んぐっ!』していませんでしたか?先生もちょっとソノ気になって、『ワテのベンツ、乗ってみなはるか?』とでも云うような視線を返したのと違いますか?」

「アンタあ、直ぐオゲレツに話持ってくな。確かに、あのオネエちゃん、ワテの顔を見たら、ちょっと顔を赤らめ、スカートの上からやけど、両手を自分の股間に持っていくような仕草はしとったけどな。まあ、ションベンでもしたかったんとちゃうか。どっちにしてもやな、ワテは、あないなションベン臭いオネエちゃんには興味あらへんのや」

「どっちにしても、って、一つは、ションベンしたい、で、もう一つはなんですか?」

「アホな質問は止めえな。なんにしてもや、こういうオネエちゃんを乗せるカレシのクルマは、絶対に『土足禁止』やで。クルマは出掛ける為に乗るもんで、家やあらへん。クルマのなんたるかを理解してへんのや」




「そのカレシは、車内は綺麗を保つ、がポリシーなんでしょうね」

「なんやて!」



(続く)




2021年9月23日木曜日

【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その220]

 


<注意>

ビエール・トンミー先生のiMessageによるベンツの『クラス講座』は、ベンツの幾つかの『クラス』に対して、またそのオーナーに対して、辛辣過ぎる評価があるかもしれないが、決して、それらのベンツ、のオーナーを侮辱、差別をするものではない。


西洋美術史としてのビエール・トンミー先生の審美眼と、ハンカチ大学商学部卒の、しかも、SNCFの大家としてのビエール・トンミー先生のビジネス・センスとから、あくまで個人としての評価を述べるものである。


長年のベンツ・オーナーであるビエール・トンミー先生は、総ての『クラス』のベンツとそのオーナーを愛している。ベンツは、『評価』をするに値するクルマなのだ。『評価』をするに値しないモノについては、ビエール・トンミー先生は、言葉一つ吐くことはない。


ビエール・トンミー先生は、時に、ベンツ以外のクルマについても忌憚なき発言をされる(あくまで個人としての評価だ)。この場合も、その対象が『評価』をするに値するクルマだからである。



[ホイラーなベンツへ(続き23)]



「そりゃ、『車輪』は、『ホイール』(wheel)やないんか」


と、ビエール・トンミー先生は、は、面倒臭そうにiMessageで、生徒エヴァンジェリスト氏に答えた。ビエール・トンミー先生の生徒エヴァンジェリスト氏に対するiMessageによるベンツの講義は、ビエール・トンミー先生が『ビートル』の次の次に乗った『プレリュード』からベンツに乗り換えた事情説明となり、『ベンツのブレーキのポリシー』と話題が展開し、確実にクルマを止める為に、ベンツではブレーキパッドの削りカスがホイールに付着して黒くなる、という説明に対し、エヴァンジェリスト氏は、『車輪』と『ホイール』(wheel)って同じものなのか、と問うてきたのだ。


「本当にそうでしょうか?では、お訊きします。自転車の『車輪』は、『ホイール』(wheel)ですか?」

「ああ、『ホイール』(wheel)や」

「へえええ。『ホイール』(wheel)って、パンクするんですか?」

「アホ、『ホイール』(wheel)が、パンクするかい。パンクするんは、タイヤや。『ホイール』(wheel)はな、タイヤの内側にある円形の金属の部分や」




「しかし、先生、自転車でも自動車でも、『前輪』(つまり、前方の『車輪』)がパンクしたとか、『後輪』(つまり、後方の『車輪』)がパンクしたとか、云ったりすることがありますよ」

「うっ….そりゃ、便宜上、『ホイール』(wheel)とタイヤを含めたもんを『車輪』ちゅうことも、のうはないだけや」

「そんないい加減な云い方が許されていいのですか?『便宜上』って、何の便宜なのですか?先生ともあろうお方が、誰かに便宜を図っておいでなのですか?ああ、先生は、小学生の頃、山口県にお住いでしたから、山口県と縁のとても深いあの同級生(同い年)のカレに忖度されているのですか」

「相変らずゴチャゴチャ五月蝿いやっちゃな。元々、『車輪』は、まさに『車輪』だけで(つまり、『ホイール』[wheel]やな)、タイヤちゅうもんは付いとらんかったし、そもそもタイヤなんちゅうもんはなかったんやあ、思うわ。やから、最初は、色んな『クルマ』についとる『車輪』は、『車輪』=『ホイール』(wheel)、で良かったんやろ思うけどな、その内、タイヤちゅうもんがでけて、『車輪』(つまり、『ホイール』[wheel])に付くようになって、タイヤの付いとらん元々の『車輪』の部分が、厳密には『車輪』(つまり、『ホイール』[wheel])やけど、タイヤも含めた全体も『車輪』と云うこともあるようになったんとちゃうかあ、思うで」

「おおさすが、ハンカチ大学商学出身にして『SNCF』の大家でいらっしゃる」

「『SNCF』の大家は関係ないと思うけどな」

「では、ベンツではブレーキパッドの削りカスが付着して黒くなるという時のホイールって、タイヤ付の『車輪』のことですか、それとも、タイヤの付かない『車輪』(まさに、『ホイール』[wheel])のことですか?」

「タイヤの付かない『車輪』(まさに、『ホイール』[wheel])のことや」

「であれば、最初からそうご説明頂くと助かります」

「アンタ、最初から分ってたやろ。分ってて、『車輪』は、『ホイール』(wheel)か、ちゅうことを話しとうて、態と分らんふりしてたんやろ。まあ、どうでもエエが、大事なんは、ベンツではブレーキパッドの削りカスがホイール(タイヤの内側の金属の部分のことやで)に付着して黒くなる、ちゅうことや。コレ国産車やと絶対ないで。国産車のホイールはどれもコレも綺麗なもんや」

「ふう〜ん」

「なんや、文句あんのかいな」



(続く)




2021年9月22日水曜日

【速報!】連絡フォームを作りました。



既に、見つけられた方もいらっしゃると思いますが、『プロの旅人』のWebバージョン(Web表示版)では、『連絡フォーム』(以下)を作りました。今のところ、ページの右上の方にあります。





『プロの旅人』に対して(或いは、エヴァンジェリスト氏やビエール・トンミー氏に対して)、コメント(公開)ではなく、要望等、連絡したいことがおありの方は、この『連絡フォーム』をご利用下さい。


海外の読者の方等で、日本語ではどうも、という方は、日本語で以外の言語でご連絡頂いても結構です。私が理解できるかどうかは分りませんが(英語かフランス語なら、多分、なんとか分るかと思います)。


では、ご連絡をお待ちしています!



[実は、『SNS共有ボタン』もこっそり作りました。ご利用下さい]





【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その219]

 


<注意>

ビエール・トンミー先生のiMessageによるベンツの『クラス講座』は、ベンツの幾つかの『クラス』に対して、またそのオーナーに対して、辛辣過ぎる評価があるかもしれないが、決して、それらのベンツ、のオーナーを侮辱、差別をするものではない。


西洋美術史としてのビエール・トンミー先生の審美眼と、ハンカチ大学商学部卒の、しかも、SNCFの大家としてのビエール・トンミー先生のビジネス・センスとから、あくまで個人としての評価を述べるものである。


長年のベンツ・オーナーであるビエール・トンミー先生は、総ての『クラス』のベンツとそのオーナーを愛している。ベンツは、『評価』をするに値するクルマなのだ。『評価』をするに値しないモノについては、ビエール・トンミー先生は、言葉一つ吐くことはない。


ビエール・トンミー先生は、時に、ベンツ以外のクルマについても忌憚なき発言をされる(あくまで個人としての評価だ)。この場合も、その対象が『評価』をするに値するクルマだからである。



[ホイラーなベンツへ(続き22)]



なんや、それ、って訊かへんで」


と、ビエール・トンミー先生は、iMessageで、生徒エヴァンジェリスト氏を突き放した。ビエール・トンミー先生の生徒エヴァンジェリスト氏に対するiMessageによるベンツの講義は、ビエール・トンミー先生が『ビートル』の次の次に乗った『プレリュード』からベンツに乗り換えた事情説明となり、『ベンツのブレーキのポリシー』と話題が展開し、確実にクルマを止める為に、ベンツではブレーキパッドの削りカスがホイールに付着して黒くなる、という説明に対し、エヴァンジェリスト氏は、ホイールの話に脱線させてきたのだ。


『横肩車』、クロス・オーバー・ホイール』のことは、先生も、ご存じのはずです」

「知らへん」

「『プロの旅人』で紹介されたことがありますから」

「あんなオゲレツBlogなんか読んでへん」

「読んでないのに、オゲレツって分るんですか?」

「うっ….」

「アントニオ猪木が、今でいう『卍固め』を開発した時に、NETが(今のテレビ朝日ですね)、その新技のネーミングを公募し、私が応募した名前です」



[参照:アントニオ猪木のあの新技の名称の公募に応じていたエヴァンジェリスト氏(前編)



「そないなん、どうでもエエがな」

「でも少し恥ずかしいです」

「アンタに恥なんちゅうもんあんのか?」

「考えた名前は、『横肩車』でしたが、英語名称も必要でした。でも、中学生でしたので、まだ英語もよく分っておらず、『肩車』を上手く表現できませんでした」

「中学生やったんやろ、そりゃ、しゃーないで。でも、その後のアンタは、フランス文学修士やけど、英語もでけるようになったんやろ。大学院に入るにも英語の試験あったと聞いたし、会社員になってからも、アメリカやフランスの会社と提携して、英語で仕事してたんやから」

「ええ、読み書きは、まあまあできるようになりましたが、ヒアリングはダメでした。アメリカ人でも、北部の人の英語ならまだしもだったのですが、南部の人の英語は全く聞き取れませんでした。一昨年(2019年)、愚息の結婚式で行ったハワイの英語も、訛りがあるのか、よく聞き取れませんでした。英語のできない女房や娘の方が何故か、聞き取れていましたが」

「ああ、アンタ、『ディクテ』は苦手やったもんな。東京日仏学院を逃げ出した前科持ちやからな」



(参照:「Oui……present…Oui……present…」【青春の東京日仏学院】



「ああ、フランス人の英語は、聞き取り易かったです」

「フランス人のフランス語は、聞き取れへんかったんくせに」

「問題は、そこにはありません、先生。問題は、『肩車』を英語でどう云うか、です。まあ、今なら、『肩車』って英語で、『carry ~ on one’s shoulders』とでも云うらしいと調べて分りますし、名詞的に云うと、『a shoulder ride』って感じだろうと分ります。しかし、私、当時、いくら英語を習い出したばかりの中学生だったとはいえ、『肩車』で『車』(車輪)だから『ホイール』とするなんて短絡的でした。まあ、『卍固め』の形からしたら、『クロス・オーバー』までは云い得ているようには思いますが」




「どうでもエエがな」

「でも、疑問があります」

「また、疑問かいな。よう疑問持ちよるな」

『車輪』って、英訳すると、『ホイール』(wheel)だと思いますが、『ホイール』(wheel)を和訳すると『車輪』なんでしょうか?いや、『ホイール』(wheel)って、和訳すると、『車輪』だと思いますが、『車輪』を英訳すると『ホイール』(wheel)なんでしょうか?、かな…」

「はあん?何、云うてんねん?さっぱり分らんで」

「そう、『車輪』と『ホイール』(wheel)って同じものなのか、という疑問です」



(続く)




2021年9月21日火曜日

【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その218]

 


<注意>

ビエール・トンミー先生のiMessageによるベンツの『クラス講座』は、ベンツの幾つかの『クラス』に対して、またそのオーナーに対して、辛辣過ぎる評価があるかもしれないが、決して、それらのベンツ、のオーナーを侮辱、差別をするものではない。


西洋美術史としてのビエール・トンミー先生の審美眼と、ハンカチ大学商学部卒の、しかも、SNCFの大家としてのビエール・トンミー先生のビジネス・センスとから、あくまで個人としての評価を述べるものである。


長年のベンツ・オーナーであるビエール・トンミー先生は、総ての『クラス』のベンツとそのオーナーを愛している。ベンツは、『評価』をするに値するクルマなのだ。『評価』をするに値しないモノについては、ビエール・トンミー先生は、言葉一つ吐くことはない。


ビエール・トンミー先生は、時に、ベンツ以外のクルマについても忌憚なき発言をされる(あくまで個人としての評価だ)。この場合も、その対象が『評価』をするに値するクルマだからである。



[ホイラーなベンツへ(続き21)]



「ええ?私、イオン宇品店にブレーキパッドを買いに行ったのですか?」


と、生徒エヴァンジェリスト氏は、お惚け感漂うiMessageで、ビエール・トンミー先生に訊いた。ビエール・トンミー先生の生徒エヴァンジェリスト氏に対するiMessageによるベンツの講義は、ビエール・トンミー先生が『ビートル』の次の次に乗った『プレリュード』からベンツに乗り換えた事情説明となり、『ベンツのブレーキのポリシー』と話題が展開し、確実にクルマを止める為のブレーキパッドを広島のイオン宇品店で、エヴァンジェリスト氏が買ったか否か、と云う、まあ、どうでもいい会話になっていたのだ。


「あんな、質問に対して質問で返しないな。ワテが訊いてんのや、アンタ、ホンマにスーパーにブレーキパッド買いに行ったんか、とや」

「私、イオン宇品店にブレーキパッドを買いに行った、なんて申し上げていません。買いに行ったのは、パッドです」

「ブレーキパッドやないんかい?何のパッドやねん?」

「モチの論、尿漏れパッドですよ、先生。大人用オムツにあてるパッドです」

「何、昭和のギャグ云うてんのや。それに、ブレーキパッドのこと云うてんのに、何で尿漏れパッドの話になんねん」




「父は、ボケてもおらず、寝たきりでもなく、体を動かすことはできましたが、何しろ90歳を超えていましたから、体をシャキシャキと動かすことまではできず、尿意、便意をもよおしても、トイレに間に合わないこともある為、大人用オムツをしていたのです」

「ああ、ワテらもその内、オムツのお世話になるかもしれへんなあ。他人事やあらへんで」

「おお、さすが先生です。『ヒトゴト』をちゃんと『他人事』と入力されていらっしゃいます」

「せやで、『ヒトゴト』は『他人事』やし、『他人事』は『タニンゴト』やないさかいな」

「私たちもいずれ、いや、遠からず大人用オムツのお世話になるかもしれませんし、父は実際使っていましたが、オムツだけでは足らず、漏れるオシッコを塞きとめる為、尿漏れパッドを当てていたのです」

「念には念を入れ、ちゅうことやな」

「ブレーキパッドが爆走するクルマを止めるように、漏れパッドも、漏れてはまずい尿が漏れるのを止めるのです。おんなじではありませんか」

「それはそやけど、誰が、アンタのお父はんの漏れる尿を止める話してんのや。ワテが話しとんのは、ベンツのブレーキのことや。ベンツではな、ブレーキパッドの削りカスがホイールに付着して黒くなるんや」

「おお、ホイールですか!」

「なんやまた妙な方向に話持ってこ、としてへんか?」

「懐かしいです、ホイールって」

「訊かへんで、ホイールの何が懐かしいんか」

「ホイールって、車輪でしょ?」

「当り前やんか」

『横肩車』、クロス・オーバー・ホイール』です」



(続く)