2022年8月31日水曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その76]

 


「アイツに声をかけてきた若い女性は、アイツの放つ『異臭』に立ち眩みでもしたのじゃないのか?」


というビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員宛のiMessageを送信ながら、エヴァンジェリスト氏は自らの鼻を摘まむようにした。


「確かに、何かの衝撃に身を後ろに引いたようには見えましたが、それは、あの方が、トランクにフロントガラスを拭く為のスプレーとウエスをしまい、出先から帰るべく、運転席に座ろうとされた時でした。ああ、ウエスって、布のことです」

「英語の『waste』が鈍って『ウエス』になったんだろ。『waste』は、廃棄物とかいう意味で、不要となった布切れから作ったから『ウエス』と呼ばれるようになったんだろうが、それを英語で云うなら『waste cloth』なんだろうに」

「ああん?また博識系ですか。アナタには似合いませんよ」

「ふん!で、何故、アイツは、出先の道端で『Eクラス』のフロントガラスを拭いたんだ?」

「フロントガラスが汚れていたのだろうと思います」

「であれば、自宅を出る前に拭けばいいものを、出先の道端で拭くなんて、なんだか自分の『Eクラス』を他人に見せびらかしているみたいだな」

「少し雨模様でしたから、自宅を出た後の汚れが気になられたのではないかと思います。あの方は、いつも奥様に、『視界は常に晴朗に』と仰っていますし」

「アイツ、水野晴郎はもう亡くなっているから、映画鑑賞会の司会は頼めんのにのお」




「いやあ、あなたって本当にクダラナイですねえ。『視界は常に晴朗に』したので、あの若い女性にも、はっきり見えたのだと思います」

「は?どこに、何を見たんだ?」

「ダッシュボードです」

「なんだ、ダッシュボードの上にエロ写真を置いていたのか?」

「私のあの方を侮辱なさらないで下さい!」

「へ?『私のあの方』?」



(続く)




2022年8月30日火曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その75]

 


「あれは、絶対、『ナンパ』です!」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏宛のiMessageに自らの確信を込めた。


「あの若い女性は、『フットトランクオープナー』の様子を見ていただけではないんです」

「他に、何かを見ていたというのか?アイツの股間か?」

「うげっ!アナタ、オゲレツにも程というものがありますよ。あの方の股間が、いくら立派だとはいえ…あっ」

「『ベンツは足でトランクが開くんですね』と話しかけられたんだな?」

「ええ、そうです」

「ということは、アイツに近づいてしまって、『臭い』に殺られたんだな」

「え?『臭い』ですか?」

「アイツの股間は、嘗ては、『原宿の凶器』の異名を取っていたらしいんだ」




「おお!『凶器』の放つフェロモンですね!」

「尤も、『原宿の凶器』も今は昔。今では、『昔、原宿にいた今は、小器』に成り下がっているらしい」



(参照:バスローブの男[その102=最終回]



「そうは見えませんでした。まだまだご立派なように…あ、いえ」

「成り下がったとはいえ、今は多分、フェロモンに加齢臭が混じって、ある意味、全盛期以上に強烈な『臭い』になっているのではないかと思う」

「確かに、遠くからあの方の様子を窺っている時に、何か腐ったような臭いが漂ってきたことが」



(続く)




2022年8月29日月曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その74]

 


「いいですか、あの方は、ご自分のベンツ『Eクラス』の後部、トランク下のところで、蹴りを入れる動作をしただけですよ」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏宛のiMessageに怒りを滲ませた。


「相手は、人間ではなく、ガタイの大きい『Eクラス』だから、『坐薬』を入れるにも蹴りが必要だったんだろう」

「クルマ向けの『坐薬』ってあると、本気で思っているんですか?」

「ワシは、クルマの免許は持っていないし、クルマのことは知らんが、クルマの調子が悪い時に、『坐薬』のようなカプセルを注入することはないのか?そんなものがないのに、アイツが、自分のベンツ『Eクラス』のトランク下のところで、蹴りを入れるような動作を取ったとしたら、他には、『フットトランクオープナー』くらいしか、考えられないなあ」

「むっ!アナタ、確信犯ですね!最初から、あの方が、『フットトランクオープナー』でご自分のベンツ『Eクラス』のトランクを開けたことを判っていながら、『浣腸』だとか『坐薬』だとか、オゲレツというかグロな方向に話を持って行ったんですね!」

「で、要するに、アイツは、道端で、『フットトランクオープナー』で自分のベンツ『Eクラス』のトランクを開けた時に、若い女性に『ナンパ』されというのか?」

「そうなんですう。『ベンツは足でトランクが開くんですね』と話しかけられたんです」




「その若い女性は、『フットトランクオープナー』を初めて見て、驚いたんだろう。で、それが、どうして『ナンパ』なんだ?」

「いえ、その若い女性は、トランクが足で開くことに関心があったのではなく、明らかにあの方の魅力に心を動かされて思わず声をかけたんですよ!」

「はあああ?そうかあ?」

「私だって…」

「んん?なに?で、アイツは、その若い女性に、『どうですか、一緒に車に乗ってどっかに行きますか?』とでも云ったのか?」

「いえ、あの方は、内心、『へっ?』と驚いた様子が見えましたが、そこは少しも騒がず、『ハイ、そうなんです」とだけお答えで、何事も無かったように荷物をトランクに積んで走り去られました」

「ふううん。クダラン。それのどこが、『ナンパ』で『危機一髪!』なんだ?」



(続く)




2022年8月28日日曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その73]

 


「そう、要するに、あの方は、『坐薬』をお尻の穴に入れられて悶絶したんですね?『浣腸』ならまだしも、『坐薬」でそんなプレイがあるとは『尻』ませんでした」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏宛のiMessageに珍しくダジャレを入れてきた。


「おお、君はシャレも上手くなってきたな。いいぞ、いいぞ」

「しかも、そんなプレイを、あの方、『おばさん』としたなんて。どうせなら、私…」

「君は、ホント、『プレイ』が好きだなあ。あいつは、君が想像するような『プレイ』として『坐薬』をお尻の穴に入れてもらったのではないぞ。高熱を発したのだ。それで辛くて辛くて、病院に行って、おばさん看護師に『坐薬』をお尻の穴に入れてもらったんだ」

「『おばさん』って、看護師なんですか?」

「だから云っただろ、『聖職』だと」

「いえ、アナタのことですから、てっきり『性職』のことだと。それを変換し間違えたのか、敢えて意味深な『感じ』で『漢字』を変えてみせたのかと思っていました」

「シャレはもういい」

「しかし、アナタは、あの方が、看護師に『坐薬』を入れられて『悶絶』した、とオゲレツな方向に話を持って行ったではありませんか」

「まあ、アイツは、お尻の穴に異物を入れられる苦痛で悶絶しながらも、その瞬間、同時に君が期待するような種類の『悶絶』もした可能性は否定はできんなあ」

「ああ、あの方は変態ですからねえ」

「ワシは、もう話したように、若い看護婦から『坐薬を入れてあげますよ』と云われたことがあるが、きっぱりと断った。頸部椎間板症、つまり、首のヘルニアで入院し、ベッドに横たわって首の牽引をしながも激痛に襲われていた時のことだ。どれだけ痛みがひどくても、お尻の穴に異物を入れられるのは嫌だったからな」

「あの方は、若い看護婦になら、もっと嬉々として『坐薬』を入れてもらい、もっと『悶絶』したでしょうねえ」




「おばさん看護師に『坐薬』を入れてもらって以来、アイツは、『坐薬』マニアになって、ついに自分のベンツ『Eクラス』に『坐薬』を入れる程になっていたとはなあ」



(続く)




2022年8月27日土曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その72]

 


「おお、君、勘だけではなく、センスもいいな」


と、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員をiMessageで珍しく讃えた。


「あんな漢字を知らない奴らのことを『デンデン』(云々)することを止めることを『願ってイません』」

「いいぞ、いいぞ。大事な儀式で(ワシは大事とは思わんが)、『願ってイません』(願って已みません)なんてこと平気で云えるのは、なかなかの『シンゾー』だ」

「私をあんな漢字を知らない奴らと一緒にしないで頂きたい。お尻から入れる薬の『ザヤク』は、『座薬』ではないのですか?」

「おお、確かに、『ザヤク』が『座薬』かどうか、というのは、漢字知らずのあの2人とはレベルが違う問題であった。彼らと比較すると、君には常識というものがないのか、というのは、云い過ぎであった。申し訳なかった。そう、お尻から入れる『ザヤク』は、君の云う『座薬』も間違いではないんだろうと思う」

「『踏襲』を『フシュウ』と読んだり、『頻繁』を『ハンザツ』、『未曾有』を『ミゾウユウ』、ましてや、『云々』を『デンデン』と平気で読んでしまえるくらいだったら、私、国のリーダーになっています!」




「しかし、『ザヤク』は、本来は、『坐薬』なんだろうと思う」

「え?『坐薬』…ですか?『坐』って漢字ありましたか?」

「あるから、こうやって入力変換できているんだろうが」

「『坐』って、『座』の旧字ですか?いや、旧字って、普通、もっとややこしいものだから、略字ですか?」

「いや、『坐』と『座』は、語源的には共通するところはあるものの、本来は別の漢字らしい。『坐』は、『人』が『土』に座ることを意味しているんだそうだ。で、『座』の方は、『坐』に建物を意味する『广』(まだれ)がついて、建物の中で人が座る場所を意味している、と聞いたことがある」

「アナタ、あの方と張り合って、博識系を目指そうとしているんですか?」

「つまりだ、『坐』は動詞というか、座る行為を意味する漢字で、『座』は、名詞というか、座る場所を意味する漢字なんだそうだ。ただ、『坐』は常用漢字ではないから、『坐』と使うべきところで、『座』を使うようになっているらしい。座るようにしながらお尻の穴に入れるから、本来は、『坐薬』なんじゃないかとは思うが、今は、『座薬』でもいいんだろうと思う」

「そんなこと興味ありません!アナタは、オゲレツ系なんだから、方向性を間違えないで頂きたい。要するに…」



(続く)




2022年8月26日金曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その71]

 


「『ザヤク』って」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏宛のiMessageで、慎重に質問をする。


「お尻から入れる薬のことですか」

「そうに決まっとるであろうが」

「つまり、『ザヤク』って、『座薬』のことなんですね?」

「違う!」

「ええー、だって、『ザヤク』って、お尻から入れる薬のことなんでしょ?」

「そうだ」

「だったら、『座薬』じゃないですか」

「ああ、君には常識というものがないのかね。君は、どこかのバカを『フシュウ』しているのかね?」

「はああ?『フシュウ』?」

「ああ、『フシュウ』(踏襲)だ。あんなバカを『ハンザツ』に出してこられてもなあ」

「はああ?『ハンザツ』?」

「ああ、『ハンザツ』(頻繁)だ。あんなバカは、『ミゾウユウ』かと思っていたんだが」

「はああ?『ミゾウユウ』?ああ、『ア、ソウ』ですか」

「ほほお、なかなか勘がいいな。『アソウ』だよ。『ミゾウユウ』(未曾有)なバカは、もう一人いたんだ」

「もう、漢字が読めない奴らのことを『デンデン』しなくて結構です」




(続く)



2022年8月25日木曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その70]

 


「ま、ま、まさかやあ!あの方が、『ヤク』をしていたとは!」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏宛のiMessageで、大仰に驚いてみせた。


「君は、下手な沖縄弁で、しかも態とらしい勘違いを敢えてして『ちむどんどん』しているんだな」

「でも、打ってもらったんでしょ、おばさんに?」

「うーむ、あれを『打つ』という表現を使うのかどうかは知らんが、普通は、『入れる』という表現を使うと思うが、まあ、あの形からして、『打つ』でも間違ってはいないかもしれんなあ」




「でも、まさかあの方に、『ヤク』に手を出した過去があったとは!」

「君は、本当に誤解しているのか、惚けてみせているのか知らんが、あれも『ヤク(薬)』であることは確かだ。我慢の限界まで達して、使わざるを得なかったんだろう。ワシは、どんなことがあっても、お尻の穴に入れられるのは無理だがな」

「え!?あの方は、アレをお尻の穴に入れられたのですか?」

「そりゃ、そうだろう。しかも、おばさんに、だ。ワシの場合は、若い女性に『入れてあげますよ』と云われたんだが、それでも断った。『浣腸』同様、お尻の穴に異物を入れられるのは、とても無理だ」

「私も、お尻の穴に異物を入れられる経験は、まだありませんが、慣れれば、それはそれでいいのかもしれません」

「は?まだ?慣れれば?

「ああ、お尻の穴に打った方が、効きがいいんでしょうか?」

「おお、まさにそうだ。『ザヤク』の意義は、まさにそこにあるんだろうからな」

「え?『ザヤク』って….」



(続く)




2022年8月24日水曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その69]

 


「おお、なるほど。君の云うことにも一理はあるな」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員宛にiMessageを送りながら、エヴァンジェリスト氏は、その特派員相手に珍しく頷いた。


ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、ビエール・トンミー氏がおばさんに『浣腸』したことで悶絶したのではないか、と普通には考え難いことを云ってきたのではあったが。


「ワシら常人の理解を超えた感性をアイツら変態は持っているんだろうなあ」

「アナタが常人?ま、それは別として、ええ、そうです。あの方は、西洋美術史の研究をするふりをしながら、西洋絵画の名作に描かれた『インモー』で興奮なさる方ですからねえ」

「だが、残念ながら、アイツが悶絶したのは、おばさんに『浣腸』したからではないんだ」

「えっ!まさか、相手は、おじさん?アナタですか?」

「いい加減にしろよ!何故、ワシがアイツに『浣腸」をしてもらわないといけないんだ」

「アナタ、便秘だったんですね?」




「いや、ワシは毎日、快食快便だ」

「では、『プレイ』だったんですか?」

「ワシにそんな趣味はない!」

「はは~ん。アナタ、あの方の親友だから、仕方なく、あの方の『プレイ』に付き合ったんですね?」

「君は、馬鹿か?誰が、そんなことするもんか!」

「私だったら…」

「ワシとアイツが…ああ、そんな姿は、想像さえしたくもない!」

「私も見たくはありませんし、ああ、もう想像しただけで忌まわしい」

「アホンダラ!相手は、ワシではなく、おばさんだし、『浣腸』ではない。『ザヤク』だ」



(続く)




2022年8月23日火曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その68]

 


「相手は、おばさんだったんだ」


と、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員宛のiMessageに、淡々として含みを持たせない云い方をすることで、相手を怒らせる程の含みを持たせたのであった。


「『相手』?『おばさん』?アナタ、またオゲレツですか?」

「無礼者!相手は、おばさんとはいえ、聖職だったんだぞ!」

「ふん!『性職』ですか?」

「無礼者!あ、いや、『性職』だって、それがちゃんとした仕事なら、無礼というは失礼だな。反省する」

「しかし、あの方が、そんな『プレイ』をお好きだったとは。まあ、あの方、普段は紳士然としてらっしゃいますが、根は変態ですからねえ」

「そうだ、アイツは変態の中の変態、変態界の王様といってもいい存在だ。だが、あれは『プレイ』じゃないぞ。もう一度云うが、アイツは、おばさんに『浣腸』をされたんじゃないんだ」

「あの方は、若い女性がお好きですからねえ。どうせ『浣腸』してもらうなら、おばさんではなく…」

「君は確信犯で読み間違いをしているようだが、おばさんに『浣腸』をされたんじゃない、という表現で否定しているのは、『おばさん』ではな『浣腸』だ」

「ええー!そうだったんですか!あの方は、おばさんに『浣腸』されたんじゃなかったんですね」

「そうだ。ようやく分ったか」

「まさか、あの方がおばさんに『浣腸』した、とは思ってもみませんでした」




「ばっかもーん!よーく聞くんだ。ワシが否定したのは、『浣腸』そのものだ。『浣腸』を『した』とか『された』という、能動、受動の問題ではないんだ。それに考えてみろ。どうして、おばさんに『浣腸』することで、どうしてアイツが悶絶するんだ?」

「だってえ、それは、あの方が変態だからでしょ」



(続く)




2022年8月22日月曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その67]

 


「アナタ、またそうやって、話を混ぜっかえすんですね!」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏宛のiMessageで相手に唾を吐き掛けた。


「どうして、あの方が、キックボクシングをなさるんですか?」

「どうしてもこうしても、アイツは、ベンツにキックをしていたんだろ?」

「ふん!あの方が、愛車ベンツ『Eクラス』にキックボクシングのようなキックをオミマイする訳ないでしょ!『Eクラス』の後部、トランクのところを軽く蹴り上げるそぶり見せただけですよ」

「おお、『Eクラス』に『カンチョー』したんだな」




「アナタっていう人は、オゲレツというか、最低の品性の持ち主ですね。あの方は、立派な大人ですよ。その辺の悪ガキみたいに『カンチョー』なんかする訳ないでしょっ!」

「そうかなあ、ワシは、アイツは実は『浣腸』が好きなんではないかと思っている」

「はああ?『浣腸』?『カンチョー』の話だったんじゃないんですか?あの方、『浣腸』されたことあるんですか?」

「いや、ないようだ」

「れ、れ、れ……」

「『浣腸』されたことはないようだが、あの時は、悶絶したらしいぞ。ふふ」

「『悶絶』?『あの時』?」



(続く)




2022年8月21日日曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その66]

 


「ふふ~ん。誤魔化さないで下さい!」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏宛のiMessageで怒りを隠さない。


ビエール・トンミー氏が、BMWを横に若い美人と収まった写真について、その美人を『通りすがりの人』ではないか、と云ってきたからであった。


「あの2枚の写真は、別の日の写真でしょ。1枚は伊豆半島に行った時のもので、もう1枚は三浦半島に行った時のものです。2回もたまたま同じ人が通りがかるものですか?」

「まあ、そういうことがないとも限らないだろう」

「しかも、ただの通りすがりの人間が、どうして、あの方と一緒に写真を撮るんですか?」

「ああ、アイツには、若い頃からスター性があるからなあ。君が云う通り、偶然ではなかったのかもしれん。あの女性は、アイツの追っかけだったのかもしれんな。アイツも気をつけんとな。ついつい、追っかけの女性と、なんてことになるとなあ」

「あ!そう、そうなんです!『ナンパ老人、危機一髪!』なんです!」

「な、な、なんだ、いきなり」

「いきなりじゃあ、ありませんよ。私、最初から申し上げてましたでしょ!『ナンパ老人、危機一髪!』って」

「ほう、そうだったかなあ」

「それをアナタが、『ナンパ』を『難破』と態と間違えてみせて、話をどんどん関係ない方向に派生させていったんじゃあ、ありませんか」

「余計な話はいい。要するに、アイツは『ナンパ』したのではなく、『ナンパ』されたんだろ?」

「ええ、そうです。あの方が、ベンツを蹴り上げているところを見て、若い女性が声を掛けてきたんです!

「アイツは、広島皆実高校の頃から、なんでもできる男だったが、格闘技の素養だけはなかったと思うがなあ、ワシに隠れてキックボクシングの練習にでも通っていたのか?」




「はああ?」



(続く)




2022年8月20日土曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その65]

 


「だって、あなたが証拠写真をお見せになったではありませんか」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、またもやiMessageで、エヴァンジェリスト氏に抗議した。


ビエール・トンミー氏の『浮気』相手である『みさを』という女性が実在することを、エヴァンジェリスト氏が知らないそぶりを見せたからだ。


「証拠写真?」

「先程、見せて頂いた2枚の写真ですよ」

「ああ、BMWの写真だな。BMWに『みさを』なんて、ニックネームかなんか知らんが、名前がついていたとは知らなかった」

「はあ?クルマの話なんかしてませんよ」

「何を云っているんだ。君じゃないか、アイツがベンツを蹴り上げた、と云ったのは」

「そうは申し上げましたが…」

「要するに、アイツがベンツを蹴り上げたということは、ベンツに見切りをつけ、BMWに乗り換える、ということなんじゃないのか?『メルセデス』から『みさを』の乗り換える、ということなんだろ?『乗り換える』っていうと、なんだか卑猥な感じがするがな。ふふ」




「何を想像しているんですか!?アナタって、本当にオゲレツですね!」

「そりゃ、まあ、否定はできんな」

「でも、判りました。『メルセデス』って、あの方の奥様のことではなく、ベンツのことだったんですね。私が申し上げた『みさを』は、BMWのことではありませんよ。その写真に、彼の方を一緒に映っていた女性ですよ」

「へへえ、あの女性は、『みさを』っていうのか?」

「そうなんじゃないんですか?」

「知らんなあ」

「じゃあ、誰なんですか、あの美人は?」

「通りすがりの人なんじゃないのか?」



(続く)




2022年8月19日金曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その64]

 


「アナタだって、知っているんじゃないですか?『プロの旅人』に書いてあるんだから!」


と、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、iMessageで、エヴァンジェリスト氏に抗議した。


『みさを』という女性が、ビエール・トンミー氏のことを『ビーちゃん』と呼んだことを、エヴァンジェリスト氏が知らないそぶりを見せたからだ。


「はああ~?」

「仕事依存症になったアナタを、あの方が癒そうと、江ノ島・鎌倉に連れ出した時のことを記した『治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】』ですよ。あの方は、そこで、『みさを』さんのことを回想されているじゃないですか」



(参照:治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その25]



「ああ~!?君は、あんなものを真に受けているのか?」

「『あんなもの』って、『プロの旅人』は、アナタが書い…」

「『治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】』は、『みさを』は、アイツの妄想だった感じで終ったんじゃなかったか?『みさを』って、ドラマ『悪魔のKISS』で常盤貴子が演じたファッションヘルス嬢の源氏名で、ドラマの中で常盤貴子が潔く晒した白い胸を見て、アイツが興奮したことからの妄想だったという話だったんじゃないのか?」

「まあ、一応、そうしておかないと奥様が、万が一、『プロの旅人』を眼にされることがあった時にマズイですからね」

「ああ、確かに、アイツは、『プロの旅人』のことは、『家内には絶対秘密!』とは云っているな」

「『プロの旅人』って、『虚』と『実』とが入り混じったプロレス的な読み物ではないんですか?」

「おお!よく分っているではないか!そうだ。『虚』のようで『実』があり、『実』のようでいて『虚』が混じっている。微妙というか、『虚』と『実』との絶妙なバランス上に存在する、プロレス的な読み物ではあるな。だが、猪木さんのプロレスであって、今のプロレスではないぞ」




「あの『みさを』さんは、実在したことも判りましたしね」

「え?そうなのか?」



(続く)




2022年8月18日木曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その63]

 


「『浮気』?んん、まあ、そういうことになるのかなあ」


と、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員宛のiMessageで、友人ビエール・トンミー氏の『浮気』をあっさりと認めた。


「おお、なんということだあ!」

「アイツは、『本気』ではなかっただろうから、うん、『浮気』ということになるんだろうなあ」

「あんなに若くてお綺麗な奥様がいらっしゃるのにい!」

「まあ、『メルセデス』が『本妻』で、アイツは、『メルセデス』にぞっこんだったし、今もそうなんだろうから、あれは、あくまで『浮気』だったんだとは思う」




「え?奥様のお名前は存じ上げませんでしたが、『メルセデス』と仰るんですか。そういえば、少しハーフ美女な感じもする方ですね。でも、『浮気』相手もかなりな美人ですね。『みさを』さんでしょ?」

「は?なんだ?『みさを』?」

「『浮気』相手の名前ですよ?」

「へええ、『みさを』なんて名前がついていたのか。それは知らなかった」

「私、知っているんです。あの方は、『みさを』さんに、『ビーちゃんって、若大将みたいだね』と言われたんでしょ?!」

「『ビーちゃん』!?誰だ、それ?」

「あの方のことですよ。ビエールだから『ビーちゃん』と呼ばれていたんでしょ、『みさを』さんに」

「おい、その『ビーちゃん』って気持ち悪いな。背筋がゾクっとするぞ。だが、その『みさを』が本当にアイツのことを『ビーちゃん』と呼んだのか?」



(続く)




2022年8月17日水曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その62]

 


「アイツは、『ジェームズ・ボンド』の再来とも云われるが、『シン若大将』ともいえる存在なんだ」


と、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員宛のiMessageで、友人ビエール・トンミー氏を称えた。


ビエール・トンミー氏が、BMWで三浦半島や伊豆半島を回った際の写真をビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員に見せたことから、話は、海の男として有名な『石原裕次郎』や『若大将』こと『加山雄三』へと派生していたのであった。


「はああ~、『シン若大将』?」

「アイツは、ワシに代って石原プロ入りしても問題はなかったくらいの美貌の持ち主だし、ヨットだとか、小型船舶だとかは、ワシよりアイツの方が似合っているんだ」

「ああ、石原プロって、若手所属俳優は、小型船舶の免許も取らされるんでしたね?」

「そうだ。アイツにヨットは似合っているんだ。ヨットといえば、『裕さん』だろうが、『若大将』だってヨット姿が定番だ。アイツは、少し歳をとったが、『若大将』だ。加山雄三を超える『シン若大将』だ」




「確かに、今でも惚れ惚れするくらいでいらっしゃる。ああ…」

「『若大将みたいだね』と云われたことだってあるらしい」

「あ、ああ~!それって、確かあ…」

『タノ9薬局』のおばあちゃん、じゃないぞ」



(参照:うつり病に導かれ[その55]



「はああ?いえ、そう、あの写真は、2枚とも、あの方が結婚された後のものですか?」

「ああ、そうだが」

「あの方、浮気されたんですね!?」



(続く)




2022年8月16日火曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その61]

 


「『葉山灯台』は、お兄さんの慎太郎が、『裕さん』の三回忌を記念して、基金を募って建設したそうだからな」


と、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員宛のiMessageで、『葉山灯台』が『裕次郎灯台』とも呼ばれる謂れを説明し、図らずも、そこで、『裕さん』という人物の兄の名前を明かした。


「やっぱり…」

「葉山には、『石原裕次郎記念碑』だってあるんだぞ」

「さすが、一時、石原プロ入りを噂された方ですね、アナタは」

「葉山は、どこにある?」

「三浦半島…ということですか?」

「『裕さん』ゆかりの三浦半島を伊豆半島と混同してはいかんぞ」

「アナタ、『裕さん』、『裕さん』とまるで、石原裕次郎と…」

「まあ、伊豆半島の方は、『若大将』にゆかりのある地だから、君が、三浦半島と伊豆半島とを同じように見てしまうのも分らんではないんだがな」

「『若大将』って、原辰徳ですか?」

「君、態と惚けてるな。原辰徳は、『若大将』というより『海老一染太郎』なんじゃないのか?」

原辰徳は、バットは持っても、和傘は持たないと思いますが」




「面倒臭い奴だなあ。『若大将』は、『加山雄三』だ。『加山雄三』も、『裕さん』と同じで海の男だ。ただ、ゆかりがあるのは伊豆の方だろう。クルーザーの『光進丸』を停泊させていたからな」

「要するに、三浦半島は『石原裕次郎』、伊豆半島は『加山雄三』と、共に、大物俳優である海の男とゆかりがあるので、私が、三浦半島を伊豆半島とを混同するようなことがあっても仕方ない、ということなのですね?混同している訳ではありませんが…」

「いや、それだけではないんだ」



(続く)




2022年8月15日月曜日

【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その60]

 


「いや、違う」


と、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員に対して、iMessageで即座に否定を返した。


ビエール・トンミー氏が、BMWと一緒にいるところを写した2枚目の写真を見せたところ、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、『おお、こちらも!?』と云ってきたのだ。


「こっちは、三浦半島だ」

「いえ、そういうことではなく…」

「前の写真は、伊豆半島を一周した時のものだったが、これはまた別の日に、都内を回った後に、三浦半島を伊豆半島を一周した時のものらしい」

「いえ、三浦半島でも伊豆半島でも、そんなことはどうでもいいんです」

「おいおい、それはないぞ。三浦半島と伊豆半島とを一緒にしてはいかんぞ。君は、三浦半島の海も伊豆半島の海も同じように思っているかもしれんが」

「そうは思ってはいませんが、でも、三浦半島の西側も、伊豆半島の東側も、どちらも相模湾で、同じ海ではあると思いますが」

「海の男『裕さん』にとっては、そうじゃあないんだ」




「は?『裕さん』?」

「『裕さん』のゆかりの地は、葉山なんだぞ」

「ああ、葉山って、ヨットハーバーのあるところでしたね」

「葉山はなあ、青春時代を過ごしたところで、『葉山灯台』は、『裕次郎灯台』とも呼ばれているんだ」

「『裕さん』って…裕次郎…」



(続く)