2020年8月19日水曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その89]






「違うの、アタシ」

と、『みさを』は、顔も体も、ビエール・トンミー氏から背けるようにして、そう云った。鎌倉文学館の玄関に向かう途中にある『招鶴洞(しょうかくどう)』というトンネル、いや、『洞(うつお)』に入りながら、ビエール・トンミー氏は、『みさを』のその言葉を思い出していた。

「ごめん…」

と云って、その時、ビエール・トンミー氏は、『招鶴洞』の中で『みさを』の肩に回した手を引っ込めたのだった。

「アタシの方こそ、ごめんなさい」

『みさを』が顔を伏せていたので、眼が潤んでいることに、ビエール・トンミー氏は、気付かなかった。

「いや、失敬!」

と云って、引っ込めた手の持って行き場がなく、しばらくその手で何か踊るような仕草をした後、今度はその手で、自らの腰を軽く、幾度か打って、

「ははは、ボクってダメだ、こんなことしようとして。ああ、ホント、ダメな男だあ。ははは」

と引き攣り笑いをした。

「違うの、アタシ」

と云った『みさを』の言葉の意味を理解していなかった。

「(ああ、ボクは汚れている。彼女は、まだこんなに無垢なのに…)」

と真逆の理解をしていたのだ。しかし、その真逆の理解は、更に180度回って、『みさを』という女性の本質を捉えていたのかもしれないことは、その時のビエール・トンミー氏には、分ろうはすはなかった。




(続く)



2020年8月18日火曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その88]






「なにおー!変態に『スケベ』とは云われたくない!」

友人のビエール・トンミー氏から、『ヰタ・セクスアリス』的な自分の中学時代を明かされただけではなく、『スケベ少年』と罵られたエヴァンジェリスト氏が、反撃に出た。

「君こそ、そのトンネルで女の子の肩を抱き、少し暗がりでひんやりでもするのをいいことに、自分の方に、彼女を引き寄せたことでもあるんだろう。いやあ、ただ引き寄せただけではあるまい!」

鎌倉文学館に向かう樹木に覆われた石畳の坂道を上り、券売所を過ぎた先に、小さなトンネルがあったのだ。

「うっ…」

ビエール・トンミー氏が、一瞬、歩を止めた。

「おや、図星だったか?」
「ち、ち、違う!」
「何が違うんだ?トンネルの前から、触りまくっていたのか?」

そうだ。実は、図星だったのだ。そのトンネルの中で、『みさを』の肩に手を回したのは、その通りだった。しかし、それを悟られまいと、ビエール・トンミー氏は、自らに怒るよう、けしかけた。

「このオゲレツ野郎!君は、いつもそんな発想しかできないのか!?恥ずかしいと思わないか?」
「いや、別に恥ずかしいとは思わんが」
「いいか、それは、トンネルではない。『うつお』だ。さんずいに同じと書く『洞(うつお)』だ」
「いや、ボクは、産業医のお世話にはなっているが、『鬱』ではない。『仕事依存症』だ」
「馬鹿野郎!この『洞(うつお)』はなあ、『招鶴洞(しょうかくどう)』と云うんだ。招く鶴の『洞(うつお)』だ。源頼朝が鶴を放ったとも云われる由緒あるトンネル、ああ、いや、『洞(うつお)』なんだぞ!」




「おお、博識大先生!大変失礼した。そんな由緒あるものとはつゆ知らず、女の子を抱き寄せるなんぞ、と戯けたことを申してしまった」

本当に反省しているのか、更に巫山戯ているのか分からぬ、大仰な物言いであった。


(続く)



2020年8月17日月曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その87]






「君ともあろう者が、『鎌倉アカデミア』を知らないのか」

エヴァンジェリスト氏が、口を開け放したまま、首を少し右に傾け、友人のビエール・トンミー氏を批判した。二人は、鎌倉文学館に向かう樹木に覆われた石畳の坂道を上っていた。

「『鎌倉アカデミア』は、まあ、一種の大学みたいなもんだな」

仕方ないという気持ちを露わに、エヴァンジェリスト氏が、解説する。

「なんだ、その一種の大学みたいなものって?」

博識がウリのビエール・トンミー氏の顔は、屈辱に満ちていた。

「資金不足で大学の認可を受けることはできなかったが、自由な気風の大学にしようとしていたんだ。結局、資金難から4年余りで廃校となったそうだが、錚々たる人たちが学生だったらしい。『いずみたく』とか『前田武彦』、『鈴木清順』、『高松英郎』、『左幸子』なんかがいたんだ。あ、そうだ、『松木ひろし』も『鎌倉アカデミア』の学生だったんだ」
「は?誰だ、『松木ひろし』って?」
「おお、君っていう男は、『松木ひろし』を知らんのかあ。テレビドラマの『あいつと私』とか『ある日わたしは』なんかの脚本を書いた人だ」
「ああ、石坂洋次郎のやつだな、君がご執心だった」
「お、どうして知っているんだ?」

二人は、券売所で入館券を購入し、再び、坂道を上り始めた。

「君は、『松木ひろし』を知らんのに、『あいつと私』とか『ある日わたしは』のことは、どうして知っているんだ?」

エヴァンジェリスト氏が、屈辱に満ちた顔から、いつもの自身に満ちた顔に戻った友人に質問を重ねた。

「ふふ、中学生の君は、『あいつと私』とか『ある日わたしは』を見て、『んぐっ!』しまくっていたんだ」






「ううっ…えい!構わんではないか。中学生なんてそんなものではないか!」
「しかし、君は、その『んぐっ!』を抑えきれなくなって、そう、『パルファン』子さんだったかな、彼女に、『んぐっぐっーっ!』となって、後をつけて、『ボクと付き合ってくれないか?!』と、告ったんだ。このスケベ少年めが!」




「どうしてそこまで知ってる!?他人の心の中に、まさに土足で踏み込みやがって!」
「ふん!僕だけじゃないぞ。世界中が知っていることだ。石坂洋次郎に、君は『性』を目覚めさせてもらったと思っていたが、実際には、そうか、『鎌倉アカデミア』の松木…なんだったかな、ヒトシか、いや、ヒロシか、そいつに『んぐっ!』させられたんだな。スケベ・ミドリチュー生よ」

罵り合うこの二人の老人を見る人がいたら、二人が友だち同士とは思わず、その坂道で殺傷事件でも起きるのではないか、と思ったかもしれない。


(続く)


2020年8月16日日曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その86]






「前田家の別邸が、何故、今、文学館なんだ?」

鎌倉文学館の玄関に向かう、樹木に覆われた石畳の坂道を再び、上りながら、エヴァンジェリスト氏が、ビエール・トンミー氏に訊いた。

「ああ、前田家の別邸が、今の鎌倉文学館になったのは、1985年、つまり昭和65年だ。鎌倉市が、寄贈を受けたのだ。国の登録有形文化財にもなっている」

ビエール・トンミー氏は、解説を続ける。知識が、彼の頭の中に留まっておられず、口から溢れ出てくるようであった。

「どうして前田家は、鎌倉市に寄贈なんかしたんだ?ボクに寄贈してくれれば良かったのに。1985年というと、丁度、息子が生まれた年だ。ボクに寄贈してくれれば、当時住んでいた賃貸マンションより広いここに引っ越したのに」
「うーむ。どうして鎌倉市に寄贈したかは、本当のところは知らんが、維持管理が大変だったのではないのかなあ。そこのところを解説したものを知らないんだ」
「じゃ、鎌倉市は、何故、文学館にしたのだ?」
「それは、鎌倉には、ゆかりにある文士が多かったからだろう」
「へええ、そうなのか。どんな文士だ?」
「本当に知らないのか?君は、文学部だったんだろ。それも修士なんだろ」
「だから、云っただろ。別に、文学が好きだった訳ではない」
川端康成、夏目漱石、芥川龍之介、与謝野晶子とか、他にも一杯いるぞ」
「ふーん、そうなんだあ…ボクはなあ、如何にも『文士』という輩が好きではないんだ」
「川端康成、夏目漱石、芥川龍之介のことを云うに、『文士』の輩、はないだろうに」
「あ、『鎌倉アカデミア』なら知っているぞ」
「え?何だ、『鎌倉アカデミア』って?」
「山口瞳だ。そして、奥様の治子さんだ。吉野秀雄も教えていた」
「吉野秀雄は知らんが、山口瞳は、週刊新潮の『男性自身』だな」
「そうだ。だが、間違っても、『アノ』の『男性自身』ではないからな」
「君は、なんでもソッチの方向に話を持っていくなあ。君は、山口瞳の愛読者だっただろうに、失礼じゃないか」
「ああ、娘が生まれた時には、奥様から花のプレゼントをもらった」




「で、要するに、何なんだ、『鎌倉アカデミア』って?」


(続く)




2020年8月15日土曜日

【渡哲也を悼む】これが、『西部警察』か




「なんだ、なんだ、これはおかしいだろう!」

テレビを見ていたビエール・トンミー氏が、テレビを指差し、口を尖らせた。

「え?どうしたの?」

台所で夕食の後片付けをしていたマダム・トンミーが、普段は温厚な紳士である夫にしては、珍しい物言いに驚いた。

「日本人が日本国内で拳銃の撃ち合いをするなんて、それは、ないだろう!」

テレビのニュースで『西部警察』の映像が流れていたのだ。

「ああ、『西部警察』ね。渡哲也、死んじゃったのねえ」

マダム・トンミーの声は、しみじみとしていた。月曜日(2020年8月10日)に渡哲也が亡くなっていたことが、ニュースで流れていた。

「クルマだって、こんなに飛んだり、燃えたりするかあ!?」




ビエール・トンミー氏は、『西部警察』のなんたるかは、知らなくはなかったが、実際の映像をちゃんと見るのは初めてであったのだ。

「だって、それが『西部警察』でしょ?」
「え、君は、『西部警察』を見ていたのか?」
「うーん、学校の皆、見てたから、私も時々は見たの」

夫人は、『西部警察』が放映されていた頃、既に会社員であった夫より十歳下であったので、まだ学生であった。

「そうか、これかあ。これだったのか、コマサがしたことは」
「ん?何、コマサって」
「小林専務だ。石原裕次郎のマネージャーで、石原プロの専務だった人だ」
「へえ、そうなの。でも、その人が何をしたの?」
「これさ」

と、ビエール・トンミー氏は、テレビの画面を指し示した。既に、ニュースは、『コロナ』に変っていたが。

「拳銃の撃ち合いや、派手なカーアクションだ」
「石原裕次郎や渡哲也じゃないの、したのは?」
「演じたのはそうだが、ドラマをそういう方向性にしたんだ、コマサが」

その云い方は、賞賛の意味合いは感じられるものではなかった。

「ふーん、アータ、随分詳しいのね。『西部警察』も見てなかったのに」
「へ?.....いや、まあ」
「石原プロのこと、どうしてそんなに詳しいの?昔、石原プロにでも入るつもりだったの?アータ、イケメンだったし」

妻の素直な疑問に、手に持っていたiPhone X を床に落としてしまった。

「(うっ!.......チクショー、アイツのせいだ)」

そうである。ビエール・トンミー氏は、『西部警察』にも石原プロにも興味はなかったが、普段から、友人のエヴァンジェリスト氏が、『石原プロ入りする』とか『まだ、まき子夫人から電話がかかってこない』とか、石原プロについて語るものだから、知らず知らずのうちに、石原プロについて詳しくなり、テレビに舘ひろしが出てきたり、『石原プロ解散か?』というニュースがあると気になるようになってしまっていたのだ。

「(ボクは、石原プロなんかどうでもいいのに!)」

その時、ホルン音が鳴った。床から取り上げたiPhoneであった。

「む?」

エヴァンジェリスト氏からのiMessageである。

「おい、ニュースを見たか?当然、遠からず、ボクのところに取材が殺到すると思うが、『ノーコメント。事務所通してくれ』とするから宜しく頼む」
「(ふん!また戯けたことを)」

しかし、iMessageは続いた。

「また戯けたことを、と思うだろうが、君にも取材が行くかもしれないぞ」
「(まさか…)」
「君が、オフィス・トンミーに、舘ひろし、神田正輝だけではなく、渡さんをも引き抜こうとしていたことは、世界に知られているからな」
「え!?」
「だって、『プロの旅人』に書いてあったもんな」




「(おお、そうだ!渡哲也が亡くなったというのに、あんな巫山戯たことについて訊かれても……世間から叩かれてしまう!.......いや、あんな妄想系Blogなんて、誰も信じはしないし、そもそも、誰も読んでなんかいないだろう)」

と、自らを安心させた時であった。リビングの端に置いた固定電話が、けたたましく鳴った。

「(え!え!え!....まさか、まさか取材か!?)」

ビエール・トンミー氏は、ソファから腰を上げ、逃げるようにトイレへと向った。

「アータ、電話よ」

電話を取ったマダム・トンミーが、夫の背中に声をかけた。

「うっ…」

立ち止まったビエール・トンミー氏は、ほんの少しだが、パンツを濡らした。

「市役所への2回目の給付金の手続き、代行する、ですって」


(おしまい)


2020年8月14日金曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その85]






「(『みさを』のシャンプーの残り香が、ボクの鼻を襲った)」

ビエール・トンミー氏の頭と体には、鎌倉文学館の玄関に向かう、樹木に覆われた石畳の坂道で、『みさを』とそこに来た時のことが、蘇って来ていた。

「(ボクは、肩に乗せて来ていた『みさを』の頭の方に顔を寄せようとした…)」

エヴァンジェリスト氏は、坂道で、眼を閉じ、立ち止まったままでいる友人を不思議そうに見ていた。

「(んぐっ!)」

またもや生じた自らの体の『反応』が、『みさを』との時のものであったのか、今のものであるのか、ビエール・トンミー氏には、やはり分らない。

「(ああ、『みさを』!....チクショー!何故、あの時…)」

ビエール・トンミー氏の顔が、肩に乗せて来ていた『みさを』の顔を覆おうとした時、後ろから声が聞こえて来たのだ。二人連れの中年女性たちであった。

「(『みさを』は、眼を瞑っていたのに!)」




と、その時、ビエール・トンミー氏の眼を開けさせる言葉が聞こえた。

「おい!ボクは、君にキスはしないぞ。眼を瞑って待っても無駄だ」

エヴァンジェリスト氏が、ニヤついていた。

「ば、ば、馬鹿野郎!」

ビエール・トンミー氏が、博識な老紳士とは思えぬ言葉を吐いた。


(続く)




2020年8月13日木曜日

【格言】クラウゼヴィッツ曰く。




「おおーっと、とっととお、てえへんだあ、ダンナあ!」

2020年8月12日、高等遊民観察特派員から、エヴァンジェリスト氏のiPhone SE(第1世代)にiMessageが入った。

「なんだ、なんだ。今日も、安っぽい、岡っ引きみたいな言い方だなあ。やめろ。こっちは、ゲリラ豪雨に遭って、うみ死にそうなんじゃけえ」

エヴァンジェリスト氏は、この日も、自分の部屋で、下着のパンツとシャツ姿となり、ベッドに横たわっていた。猛暑だが、エアコンは部屋にあるものの、貧乏なので使っていない。それで、バテているのだ。

「ほいじゃったら、今日こそ、死んでみんさいやあ」
「わりゃ、下手くそな広島弁やめえや。要するに、どうしたんだ?」
「ビエール・トンミー氏が、変です」

この日も、高等遊民観察特派員の監査対象は、ビエール・トンミー氏である。

「だから、アイツは、元から変態だと云ってるだろ」
「今日も、猫と話しているんです」
「うーむ、そのことは、可哀想だと思っている。アイツには、世の中に友人はワシ一人で、奥方の他には、話せる相手は、ワシしかいないんだからな。しかも、奥方には、自分が変態であることはバレていないから、変態ちっくな話でもなんでも話せるのは、ワシだけだからな」
「まあ、同類ということですね」
「その昔、広島県立広島皆実高校1年7ホームで、甲乙付け難い、共に天才にして美少年と云われた仲ではある」
「今は、甲乙付け難い、共にただのヒヒジジイですね」
「アイツ、今日は何を猫に話していたのだ?」
「先ずは、猫から、ご託宣を得たかのように、『勝利ほど悲惨なものはない。敗北を除いては。』と呟いていました」
「なんだ、それは?」
「『クラウゼヴィッツ』ですよ。『カール・フォン・クラウゼヴィッツ』です」
「おお、『カール・クラウザー』か!」
「はああ?何ですか、それ?」
「『カール.ゴッチ』だ。猪木さんの師匠だ。初来日した時のリングネームは、『カール・クラウザー』だったんだ」
「『カール・クラウザー』ではなく、『カール・フォン・クラウゼヴィッツ』ですよ」
「おお、鉄の爪『フリッツ・フォン・エリック』か」
「『フリッツ・フォン』ではなく、『カール・フォン』ですよ」
「ああ、悪い、悪い。『キラー・カール・クラップ』だな」
「『カール』しか合ってないじゃないですか。何者か知りませんが、どうせ、それもプロレスラーでしょ。ビエール・トンミー氏が、プロレスに興味がないことは、アナタが一番、ご存じでしょう」
「要するに、プロイセンの軍人で、『戦争論』を書いた奴だろ、その『クラウゼヴィッツ』は。ビエルも『広島人』だからなあ。そして、『皆実高校人』だったからなあ。毎日、ワシの家に寄って、一緒に被曝建物である『被服廠』の横の道を通って皆実高校まで行っていたからなあ」
「ああ、原爆の爆風で窓の鉄製の扉が歪んでいる煉瓦造りの古い建物ですね?」




「アイツは、その被服廠』解体のニュースを知り、激怒していたんだ。そして今、広島、長崎の原爆の日が今年もあり、間も無く終戦記念日となるから、戦争について物申さないではいられくなったのだろうぞ」


「うーん、そうかなあ…」
「え?」
『クラウゼヴィッツ』の『勝利ほど悲惨なものはない。敗北を除いては。』を呟いた後は、戦争のことなんか、全く触れていませんでしたよ」

と、高等遊民観察特派員は、動画をエヴァンジェリスト氏に送ってきた。動画では、ビエール・トンミー氏が、寝転がったままの猫に対して、神妙を絵に描いたような表情で、話し掛けていた。

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『プロの旅人』を読む日本人ほど希有な人はない。『プロの旅人』を読む外国在住の人を除いては。

エヴァの奴がもう6年以上、毎週、一部関係者に送っているアイコラ・メルマガ『エヴァンジェリスト氏の独り芝居』ほど無意味なものはない。『プロの旅人』を除いては。

フランス語経済学ほど難解なものはない。フランス語を除いては。

エロほど下劣なものはない。変態を除いては。

エヴァが全国各地で講師をする研修ほど激務はない。カートとカゴの整理をする『スーパー・マン』を除いては。

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「おお、友よ……君という男は!」

エヴァンジェリスト氏は、『戦争論』の後に、敢えて『戦争』を語らぬ友人に、真に『戦争』に対する思いの強さを感じ取っていた。


(おしまい)